17回目はUSフロントライン回6月1週号USFLに入っています。
コラム17回目 は、このブログ内でお読み頂けます。
前回5月3週号では、オピニオン・リーダーの存在について触れました。一般に世論は、マスコミから各個人へ直接情報が浸透して形成されるのではありません。情報源を多く持ち、ある分野に関して詳しいと思われている身近な人々(オピニオン・リーダーと呼ばれる。例えば同僚、親戚、友人など)が、まずマスコミの情報を消化し、周辺の人々に情報が伝達され形成されるのです。今回は、その特性を活かしたマーケティング手法を紹介します。
マーケティング業界も馬鹿じゃない
もちろんマーケティング業界は、オピニオン・リーダーの存在を理解しているし、オピニオン・リーダ
ーに意図的にアプローチして人"間広告になってもらおうとしています。
分かりやすい例で言えば、売れっ子女優が持つバッグや着ている服は、メーカーから貰ったものだったりします。10万部発行のファッション雑誌に載せる広告より、イベントで写される一枚のスター写真の方が、そのバッグをヒットに導く場合があります。スターが身に着けたものを、目敏い人が真似し、それを見た友人がまた周囲に伝えていく。まさに口コミで伝播していくわけです。
口コミを利用するマーケティング
バイラルマーケティングとは、要するに「口コミマーケティング」のことです。
ウェブにおける初期「バイラルマーケティング」の大成功例として、よく取り上げられるのがHotmail。ご存知の通り、マイクロソフト社が提供している無料の電子メールサービスです。誰でも無料でメールアカウントが作れ、友人にメールを送ると、その末尾にHotmailの広告が自動的に表示されます。メールをもらった相手は、そこでHotmailの存在を知り、自分もアカウントを作る。
とても成功したので、Hotmailアカウントを持っていないウェブユーザーは存在しないように思える時もありました。
一方、以前ご紹介したGmail(グーグル社の無料メールサービス)は、最近の例です。その普及のさせ方は、Hotmailのように露骨な広告をメールに勝手に入れるのではなく、オンライン文化の変化に合わせたものでした。インターネット上のオピニオン・リーダーたちにアカウントをまず作らせます。そして彼らに招待状を発行する権利を与え、周囲に伝播させていったのです。インターネット上の売れっ子有名人をうまく使い、ブランド品の口コミ現象をうまく起こした例といえます。
前回、「Web 2.0」(ビジターもサイトのコンテンツ作りにインタラクティブに参加し、他のビジターとやり取りして、オンライン社会を構成する形態)に触れた時、ウェブにも一般社会と同じくオピニオン・リーダーが存在するようになってきたと書きました。しかも、オフライン社会と違って、オンラインのオピニオン・リーダーたちには、国境や距離などという伝達の妨げになるものが存在しません。インターネット回線だけあれば、誰でも参加できるコミュニティーが多数存在する今、会ったこともない人にでも口コミ可能になりました。現在、メールだけではなく、楽しい無料アプリ(ソフトウェア)やゲーム、ウェブサイト、ビデオなどの多くで、バイラルマーケティングの手法が利用されています。
テレビCMだけではダメ
アメフトのスーパーボウルは、広告費用の高さ(30秒で250万ドル)と、その面白さで有名です。今年の
視聴者はなんと8719万人だったそうです。でも単なるテレビCMだけでは、広告の寿命が30
秒で終わってしまうという愚かさにも、広告主は気づいてきたようです。
今年は、クロスメディア(様々な媒体を併用したキャンペーン)を意識しているCMが目立ちました。30秒では終わらせず、視聴者を自社ウェブへ導き、オンライン上でそのCMのビデオを公開してバイラルマーケティングを行い、人から人へ伝達させることが明確な狙いとしてありました。
2007年11月29日木曜日
2007年11月1日木曜日
「広告主必見!時代遅れのマーケティングはダメ」USFL連載その16(5月3週号)
16回目はUSフロントライン回5月3週号USFLに入っています。
コラム16回目 は、このブログ内でお読み頂けます。
やさしく解説 ウェブマーケティング
レイア・ワークマン(ACE Inc.)
前回(5月1週号)は、広告を無視する消費者とマーケティング業界の攻防についてお話ししました。今回は、その戦いの着地点に触れます。
ウェブ2.0?
数年前から「Web2.0」という表現を目にするようになりました。何か深い意味があるような気もしますが、その定義はけっこう曖昧です。もし「Web1.0」があったとすれば、それは、企業や個人がウェブサイトに情報を載せ、サイトのビジターはその情報を一方的に(受身的に)受け取るだけの形態を指します。一方、「Web2.0」は、ビジターもサイトのコンテンツ作りに参加し、他のビジターとやり取りして、オンライン社会を構成する形態を指します。代表例はeBay、Craigslist、Wikipediaなど。このようにウェブがユーザー参加型になり、インタラクティブ(双方向化)になるにつれ、マーケティングも変化してきました。
2.0時代のマーケティング
消費者は今、広告に対して免疫を持ち、賢くなり、マーケティングの影響を簡単には受けないようになっています。きれいな画像やちょっとした売り文句の広告を紙面やウェブに載せるだけでは不十分。ありきたりのCMを全国テレビに流すだけでも駄目。しかし消費文化は衰えておらず、むしろ恐ろしい勢いで進んでいます。つまりマーケティング業界は決して劣っていないことが分かります。一方通行だったインターネットが「Web2.0」に展開したのと同様に、現代の成功するマーケティングでは、インタラクティブな要素が加えられているのです。消費者が広告を無視する術を身に付けてきた以上、あえて消費者にとってその広告を読む・見る・聞くメリットを付加価値として加えなければならない。これこそ消費者とマーケティング業界との攻防の着地点であり、広告主はそこをきちんと理解する必要があります。
誰が世論を誘導するか
モノを売りつけようとする者に対して警戒心を持つのは当然です。しかし、商品やサービスを買いたがるのも消費者です。この矛盾を解く鍵は「信用」です。さて、「人間は何をなぜ信用するか?」というテーマは昔から研究されてきました。20世紀の中頃、二人の社会学者が、情報や世論の構成や伝達について画期的な本を書きました(Elihu KatzとPaul Lazarsfeldの「Personal Influence: The Part Played by People in the Flow of Mass Communications」)。これによると、世論はマスコミから各個人へ直接情報が浸透して構成されるのではありません。情報源を多く持ち、ある分野に関して詳しいと思われている身近な人々(オピニオン・リーダーと呼ばれる。例えば同僚、親戚、友人など)が、まずマスコミの情報を消化し、周辺の人々に伝達され構成されるというのです。「専門家」と見なされているオピニオン・リーダーは、モノを売りたいというような私利私欲がないように思われているので、彼らの意見は尊重され、世論を左右する力を持つという結論でした。
私のオピニオン・リーダー
「消費者レポート(Consumer Reports)」という雑誌をご存知ですか?消費者保護団体が発行する雑誌で、広告を一切載せず商品評価を行っています。私にとって、家電製品などをしっかり評価してくれる「オピニオン・リーダー」の一つです。でも私はマーケッターですので、心の中に一抹の不安があるのも確か。「消費者レポート」の信頼性を疑っているわけではなく、マーケティング業界の仕組みを嫌というほど理解しているからです。つまり、「消費者レポート」ほど信頼されている雑誌なら、自社商品の評価を上げるため、企業はいくらでもお金を出すのではないかと。もしバレなければの話だけれど・・・・。
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やさしく解説 ウェブマーケティング
レイア・ワークマン(ACE Inc.)
前回(5月1週号)は、広告を無視する消費者とマーケティング業界の攻防についてお話ししました。今回は、その戦いの着地点に触れます。
ウェブ2.0?
数年前から「Web2.0」という表現を目にするようになりました。何か深い意味があるような気もしますが、その定義はけっこう曖昧です。もし「Web1.0」があったとすれば、それは、企業や個人がウェブサイトに情報を載せ、サイトのビジターはその情報を一方的に(受身的に)受け取るだけの形態を指します。一方、「Web2.0」は、ビジターもサイトのコンテンツ作りに参加し、他のビジターとやり取りして、オンライン社会を構成する形態を指します。代表例はeBay、Craigslist、Wikipediaなど。このようにウェブがユーザー参加型になり、インタラクティブ(双方向化)になるにつれ、マーケティングも変化してきました。
2.0時代のマーケティング
消費者は今、広告に対して免疫を持ち、賢くなり、マーケティングの影響を簡単には受けないようになっています。きれいな画像やちょっとした売り文句の広告を紙面やウェブに載せるだけでは不十分。ありきたりのCMを全国テレビに流すだけでも駄目。しかし消費文化は衰えておらず、むしろ恐ろしい勢いで進んでいます。つまりマーケティング業界は決して劣っていないことが分かります。一方通行だったインターネットが「Web2.0」に展開したのと同様に、現代の成功するマーケティングでは、インタラクティブな要素が加えられているのです。消費者が広告を無視する術を身に付けてきた以上、あえて消費者にとってその広告を読む・見る・聞くメリットを付加価値として加えなければならない。これこそ消費者とマーケティング業界との攻防の着地点であり、広告主はそこをきちんと理解する必要があります。
誰が世論を誘導するか
モノを売りつけようとする者に対して警戒心を持つのは当然です。しかし、商品やサービスを買いたがるのも消費者です。この矛盾を解く鍵は「信用」です。さて、「人間は何をなぜ信用するか?」というテーマは昔から研究されてきました。20世紀の中頃、二人の社会学者が、情報や世論の構成や伝達について画期的な本を書きました(Elihu KatzとPaul Lazarsfeldの「Personal Influence: The Part Played by People in the Flow of Mass Communications」)。これによると、世論はマスコミから各個人へ直接情報が浸透して構成されるのではありません。情報源を多く持ち、ある分野に関して詳しいと思われている身近な人々(オピニオン・リーダーと呼ばれる。例えば同僚、親戚、友人など)が、まずマスコミの情報を消化し、周辺の人々に伝達され構成されるというのです。「専門家」と見なされているオピニオン・リーダーは、モノを売りたいというような私利私欲がないように思われているので、彼らの意見は尊重され、世論を左右する力を持つという結論でした。
私のオピニオン・リーダー
「消費者レポート(Consumer Reports)」という雑誌をご存知ですか?消費者保護団体が発行する雑誌で、広告を一切載せず商品評価を行っています。私にとって、家電製品などをしっかり評価してくれる「オピニオン・リーダー」の一つです。でも私はマーケッターですので、心の中に一抹の不安があるのも確か。「消費者レポート」の信頼性を疑っているわけではなく、マーケティング業界の仕組みを嫌というほど理解しているからです。つまり、「消費者レポート」ほど信頼されている雑誌なら、自社商品の評価を上げるため、企業はいくらでもお金を出すのではないかと。もしバレなければの話だけれど・・・・。