数日前に私は素敵な誕生日を過ごしたのですが、インターネットがそこでも大活躍しました。
まず私のパートナーがネットで遊びに行くところを探してくれて、さらにネットでそこの予約を取ってくれた。ネットで購入されたギフト券をプレゼントされて、私もそのギフト券をネットで何か買うために使うと思う。他にもネットで購入されたプレゼントや、ネットでデザインされてネット経由で贈られてきたバースデイカードもあった。
ひとりの友人は、とても面白い“カード”を送ってくれました。
とあるサイトに行って、写真をアップロードし、顔だけ切り抜いて、写真をフラッシュアニメーションと組み合わせると、オリジナルのアバターやEカードを作ることができるのです。
これはフラッシュを使った非常によい例だと思うので、ここでは“ウェブサイトにおけるフラッシュの正しい使い方”についての批判はとりあえず横に置いておきます。
これが私の友人が送ってくれた完成品のスクリーンキャプチャです(クリックすると、カードが動いている様子を見ることができます。あと、なんで私が忍者の格好をした写真がネットの波間を漂っているかについては訊かないでね)。
こちらが当該サイトのトップページ。ご自分で作ってみたいという方はぜひ行ってみてね。
ところで、日本語には“職業病”という言葉があります。月曜の朝とか長い休暇の後に仕事に行くのを遅らせたくなったり、ズル休みしたくなる病気のことではありません。
職業病というのは、自分の仕事の一部が、仕事以外の生活に食い込んでくるようになる現象のことを言います。
というわけで、私みたいな人がこういうEカードを受け取ったらどうなると思います?
まずは皆さんと同様、自分の写真を躍らせたりクネらせたり、ディスコダンスをさせようとしたりして、無駄に時間を費やしてしまう。
が、その後、私の“職業病”が発病します。
こういうクリエイティヴなアイデアや人の目を引くデザインを備えた、浸透性(spreadability というのは私の造語)のあるサイトを見ると、このサイトのオーナーがいかにしてこのツールを用いて収益をあげようと考えているかを知りたくなる。というのも、こういう人気サイトというのはただ単に私たちが遊べる場所を提供するためにあるのではなく、彼らに収益をもたらす私たちを引き寄せるために面白く作られているからです。
というわけで、このサイトのオーナーが、一体どんなビジネスモデルを念頭に置いてこれを作ったのか考えはじめた私。
カードやアバターを売ることで金儲けを考えていて、商品コストを下げて訪問者数を伸ばすことで収益をあげるようにしているのか?
(着メロサイトや音楽のダウンロードサイトがこの類ですね)
それとも、もっと何か壮大なアイデアが隠れているのか?
今のところ私が考えられるこのサイトの収益向上の手段は、こういった無料のEカードを配布することではなく、
携帯電話にダウンロードできる画像を配布すること。誰でも億万長者にはなりたいものです。でも、どれだけ売り上げを上げたら億万長者になれるかということを考えると(とりあえず、ここでは100万ドルを稼ぐことだけを基本に考えて、製品開発とかホスティング料金とかマーケティングにかかるお金なんかは除外します)、ひとつの商品を2ドル45セントで売ったとして、売らねばならない数は40万8163個(多少の誤差あり)。
お客1人が次の面白サイトに気を奪われる前にこのサイトで3つの画像を有料でダウンロードしたとして(3つというのは……私が今適当に思いついた数字)、それでも必要な顧客数は13万6054人。
ということは、100万ドル稼ぎたくて、何かいいアイデアがあったら、そのアイデアのターゲット層のうち最低13万6054人が実際に購入したいと考えるように仕向けなければならない。
ではどうするか?
昔だったら、競争相手の商品を山積みにして火をつけてのろしを上げて、メディアがそれを目にして自分の商品を取り上げてくれることを待つしかなかったかも知れない。
もしくは新聞とかラジオとかテレビに広告を出すとか。
はっきり言って私の世代の話ではないので(嘘)、昔はどういう風にマーケティングしていたか、私はよく知りません。
では今の時代、限られた予算で最低13万6054人に届くような効果のある広告キャンペーンをして、100万ドル稼ぐにはどうしたらいいか。
このページの右上にある“built by netymology”という画像をクリックすると、そのサイトが提供する答えを見ることができます。
“Netymologyはコンテンツ管理やインタフェースデザイン、企業のアイデンティティやブランド定着に役立つウェブデザイン、Eコマース、口コミマーケティング、オンラインゲーム、ウェブアプリケーションを専門としています”
ここで私が取り上げたいキーワードは、“ビラル(口コミ)マーケティング”と“ブランド定着”です。
“ブランド定着”については以前書いたので、今日はネット上のビラルマーケティングについて少々。最近のビラルマーケティングの手法は従来のそれよりも巧妙で、上手くやれば口コミ商法だとも気づかされないほどなのです。
もしかしたら従来との違いは特になく、ネットというメディアの柔軟性がそうさせているのかも知れないですが、それはまた別の日に議論するとして、話を戻します。
さて、私がこのサイトについて知ったきっかけは何でしょうか。
そう、私の友人が面白いEカードを送ってくれたことですよね。
では、その友人がこのサイトを知ったきっかけは?
彼女の別の友達が彼女にEカードを送って、その別の友達もEカードを送られて、その別の友達にEカードを送った人は、お気に入りのウェブサイトかオンラインコミュニティでこのサイトについて書かれているのを見つけたのかも知れない。もちろん、そのコミュニティの書き込みは、この面白サイトを利用している一般人を装っているけれど、実際には“口コミマーケティングの仕掛け人”であることが多い。
では、あなたがこのサイトを知ったきっかけは?
このブログを読んだからかも知れないですよね。
そんな風に、延々と連鎖していくわけです。
以下がビラル(口コミ)マーケティングの基礎的な手法です。
できるだけ“自然に”ネタを人目のつくオンラインコミュニティのような場所に植えつけ(実際にはちっとも“自然”じゃなくて故意なんだけれど、故意だとわかったらオシマイです。人は操作されていると気づくと途端に反抗したくなるものですからね)、後はそれを目にした人々が口コミで話題を広め、知らず知らずのうちにマーケティングに加担していく。
それこそウィルスのように、一般に浸透しきるまで、どんどん勝手に繁殖させるのです。
(知らず知らずのうちに、とは書いたけれど、職業病の重い人は、自分が何をしているのかわかっていながら、そのアイデアが面白いと感じたために操作されるのを厭わずに、時には協力的に、口コミに加担する場合もあります。一方で、そのアイデアに嫉妬する人もいるだろうけれど、まぁ、まともな投資家と開発者さえいれば、アイデアを盗んで同じようなことを自分でやることもできますからね)
ちなみに、以前書いた“Bag Borrow or Steal”というサイトの素晴らしいアイデアがオンラインメディアに次々と取り沙汰されたのは、ビラルマーケティングではありません。あれは、メディアの上手な使い方に精通したサイトオーナー(ビジネスオーナー)のよい例です。
今日紹介したこの“Muglets”というアイテムを扱っているサイトは、前述のデザイナーハンドバッグのレンタルサービスとは違い、まずこの商品(アイテム? ブランド?)が開発されるまで、これに対する市場すらなかったということになります。
今日はこのコンセプトについて深入りするのはやめておきますが、次に友達や同僚にカワイイサイトや面白いサイトのリンクを送る際には、ちょっと“うーん、もしかして自分はビラルマーケティングの一端を担わされているのか?”と考えてみては?
自分が故意に操られているということについて気にならなくても、どんな形で操作されているのか知るのも興味深いものですよ。