2008年5月13日火曜日

「アメリカ進出とブランディング」USFL連載その第23回(9月1週号)

日本に住んでいた頃、テレビのニュース番組などを見て不思議に思ったことがありました。「海外から見た日本」という話題が頻繁に取り上げられていたのです。アメリカでは、「海外から見たアメリカ」という報道など、恥ずかしいくらい少ないため、余計に不思議に感じたのかもしれません。

「侍」「芸者」と「日本製」
「海外から見た日本」に強い関心を持っている日本の人々は、きっとアメリカにおける日本のイメージにも詳しいのだろうと私は思っていました。
しかし今は考えを改めています。

どうもアメリカの消費者を甘く見ている気がするのです。「侍」「忍者」「芸者」という伝統的な日本のイメージを、アメリカ人の日本観だと思い込んでしまうケースがあります。そしてその伝統的なイメージに乗っかったまま、単純なアピールで攻めるマーケティング戦略が結構見られます。必ずしも不正解とは言えませんが、和食店でもない限り、おそらく不十分です。

次によく見られるアメリカ進出の失敗例は「日本製」であることを過信してしまうケースです。

前回、トヨタが行った「レクサス」のブランディングに触れました。レクサスは素晴らしい性能をもつ日本車ですが、決して「日本製」であることに頼り過ぎませんでした。レクサス自体としての巧妙なブランディングが今日の成功に結びついたと言っても過言ではないでしょう。もちろん、素晴らしい性能が大前提ですが、「日本製だから売れるはず」という単純な発想では決してなかった。その逆に、アメリカ人が日本車について持つ、ある種の固定観念を払拭するようなマーケティングを行っていたのです。

市場開拓:お尻が文化を変える?
アメリカの消費文化に元々ないものだからといって、アメリカで売れないわけではありません。その代表例には、お豆腐、緑茶、そして最近では枝豆といった、アメリカの食文化に参入した日本の食材が挙げられます。

最近の市場開拓は、ウェブマーケティングなど比較的に安価な手法の出現により、以前よりは簡単になってきています。先日、インターネット上である記事を読んでいた時、そのサイトにあったバナー広告がとても気になりました。

スマイル・マークの書かれた裸のお尻たちが私を誘っているのです。
といっても、普通のまじめなニュースサイトですよ(汗)。

そのバナーは、日本の便座メーカーTOTO社のものでした。アメリカではまだ馴染みの薄いビデ・トイレットシートを宣伝していたのです。

このバナー、5月1週号(No.355)で取り上げたバナーブラインドネス(消費者が無意識に広告を無視できるようになること)を、見事にクリアしたわけです。

何しろお尻をそのまま堂々と出しているのですから、さすがにインパクトがありました。ウェブという媒体だからできた部分もあります(タイムズ・スクエアの屋外広告にも出そうとしたところ、教会から抗議を受け、取り止めになったようです)。大手企業にしてはリスクのある大胆なアプローチですが、クリーンなイメージもきっちり残せていると思いました。

型にとらわれず、ウェブもうまく活用して、元々ない市場までも創造しようとするTOTO。学ぶべきところがたくさんあると思いませんか?

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